こんにちは。エンジニアの竹田です。
今回はこの前発表されたAgentforce3について考察してみたいと思います。
昨年9月にAgentforceが発表されてからまだ1年もたたないのにAgentforce3の発表です。 筆者は10年以上Salesforceと関わっていますが、Salesforce社のこのような驚異的な開発スピードはかつてないもので、とても驚いています。 Salesforce社のAgentforceにかける意気込み、そして投資の大きさを感じられますね。
さて、このAgentforce3ですが、単純に見るならいくつかの機能が追加されただけとも見えます。しかし、私は単なる機能追加に留まらない製品コンセプトの大きな拡張を感じました。 Agentforceといえば、これまではコンタクトセンターで使うものであり、その延長でのAgentforce for Sales(営業問合せへの回答)やAgentforce for Marketing(マーケティング目的での問い合わせ回答)がリリースされてきました。 これらは、あくまで顧客からの問い合わせに回答するためのものというコンセプトでした。
ところが、Agentforce3においては問合せ回答に留まらない、多くの業界・多くの業務へのAgentforceの進出が感じられます。 特にMCPでAgentforceが業務システムを自律的に呼び出せるようになることや、各種業界向けのIndustry Specific Actionの登場がそれを物語っています。
少し前にAgentforce in Slack そしてAgentforce for Employee(何れもAgentforceの社内利用を目的としたもの)が出ているということを考えてみると、社内業務も含めたあらゆる業務にAgentforceを拡張していくという宣言と見ていいでしょう。 つまり、Agentforce3のコンセプトは、特定業務に留まらない真の意味での汎用Digital Laborなのです。
Agentforceがリリースされた当初は分かりやすいコンタクトセンター向け。そしてここにきてあらゆる業務向けというわけですね。 これは1年以上前から練った計画に沿って展開しているということではないでしょうか。さすがにマーケティング・製品戦略はお上手です。
さてそれでは、こうした観点でAgentforce3の特徴を見て見ましょう。
なお、本記事は次のSalesforce社の動画をもとに構成しています。
Command Center
AIはこれまでのシステムよりも一層密接に業務に関わります。またAIは急速に賢くなって来ています。そして人間の側も時間がたつにつれてAIを業務に使うことに慣れていきます。 こうした変化に合わせて、あたかも人に新しい業務のやり方を教えて育てるように、Digital Laborも育てていかなければいけないのです。
やることは人に対することと似ています。変化に合わせて指示の仕方を変えたり(プロンプトを修正)、伝える情報を増やしたり変えたり(RAGで渡すデータを増やす・変える)します。
Command CenterはDigital Laborがどれくらいパフォーマンスしていて、何が課題であるかを把握するためのツールです。 パフォーマンスや課題を把握することで、変化に応じてDitital Laborに大して何をしてあげるべきかが分かるようになるわけです。
今後、多数のDigital Laborが働くようになったとしても、それらがどれだけ働いていて、どんな課題があるかが分かればDitital Laborをうまく育てることができるでしょう。
MCP対応
ここでもあらゆる業界・業務でDigital Laborが働くというコンセプトを見て取ることができます。
Ditital Laborと人との決定的な違いは、物理的に動けるかどうかです。人の場合には物理的にPCを操作することができるので、様々なシステムを使って業務を進めることができます。 Ditigal Laborは人のようにPCを操作してシステム使うことは(今は)できませんが、そのシステムがMCPに対応していれば、Ditital Laborもそのシステムを使うことができるようになります。
今回のAgentforce3の発表では、MCPを通じてPaypalの決済機能を使うというデモが映されていました。 (よく見ているとPaypalが提供しているMCPのtool(API)がそのままAgent Actionとして登録されるように見えます)
このように業務システムをMCP対応させ、Agentforceにそれを扱うように指示を与えればAgentforceが自律的に業務システム(デモではPayPal)を使って業務を進めるということができるわけですね。
今後は、様々なシステム・SaaSが標準でMCPに対応してくることになるでしょうし、既存の業務システムもMCP化するということが重要になりそうです。 MCPに対応するシステムが増えれば増えるほど、Agentforceで多業種向けのDitital Laborを作れるようになっていきます。
Industry Specific Action(とAgentExchange)
さらに言うなら、今後AgentExchangeでもこうした標準Data Modelを前提として、特定業界・業務向けのAgent Actionが流通していくことになるでしょう。
こうしたことからも、もはやAgentforceはコンタクトセンター向けだけではない多数の業界・業務向けに拡張されたといえるわけです。
おわりに
このようにAgentforceは急速に進歩しています。
今まではAIの技術的な進化が何よりも大事なことでしたが、これからはAIをいかに現実社会に適用していくかが大事なフェイズに入ります。 そうした中でAgentforceというプラットフォームは最先端にいると言っていいでしょう。
我々エンジニアも技術と社会への応用方法、どちらもキャッチアップしていかないといけないですね。