Agentforce Vibes を使ってみた

こんにちは。エンジニアの大橋です。

少し前になりますが、Salesforce の Dreamforce 2025 の中で「Agentforce Vibes」という開発ツールがお披露目されました。Main Keynote では、自然言語で指示を出しながらフローを自動生成するバイブコーディングのデモが披露されていましたね。

弊社では Cursor を全社的に活用していますが、Salesforce 開発に特化した AI 支援ツールが登場したということで、どのような機能があるのか、また実際に使ってみるとどうなのか、気になるところです。

そこで今回は、Agentforce Vibes の使用感の調査のため、実際に使ってみた中で分かった知見を書きたいと思います。

※本検証は2026年1月時点の内容となりますので、あらかじめご了承ください。

概要

Agentforce Vibes は Salesforce 開発に特化した AI 支援開発ツールです。Apex や LWC のコード生成はもちろん、MCP を経由した自然言語でのデプロイ実行も可能となっています。

まずは使用イメージを掴むために、拡張機能版の UI を見てみましょう。

以下画像のように、Agentforce Vibes の画面はエディタのサイドバーに表示されています。Cursor などのチャット画面と同様、自然言語で指示を入力して LLM を実行する形式です。

なお、Agentforce Vibes にはこの「拡張機能版」のほか、ブラウザ上で動作する「IDE 版」も提供されています。

形態 説明
拡張機能 VS Code、Cursor 等のエディタにインストールして使用する拡張機能(Agentforce Vibes Extension)
IDE ブラウザ上で動作するクラウド型(Agentforce Vibes IDE

IDE 版は Salesforce 開発に必要なツール群(Salesforce Extensions、Salesforce CLI など)があらかじめインストールされており、初期設定無しですぐに開発を始めることができます。

ただし、利用可能な Salesforce 環境のエディションやライセンスの利用可能ユーザー数には制限があるため、注意が必要です。(参考:Agentforce Vibes IDE Licenses and Permissions

検証用に準備した「Developer Edition」の Salesforce 組織では IDE 版は使用できないため、今回はローカル環境で拡張機能版(Cursor + Agentforce Vibes Extension)を使用して検証を行いました。

機能一覧

まずは Agentforce Vibes で提供されている機能一覧を確認したいと思います。

機能ごとの概要説明と使用方法を簡単に以下の表にまとめましたので、ご覧ください。 詳しくは公式ドキュメントに記載がありますので、さらに詳しい説明を知りたい場合はそちらを参照してください。

機能名 説明 使用方法
エージェントモード Plan モード(計画作成)と Act モード(実行)の2つのモードを切り替えて使用する チャット画面右下のトグルで切り替える
Deep Planning 調査→質問→計画作成→タスク生成の4ステップで包括的な実装計画を作成する /deep-planning コマンドを実行する
カスタムルール プロジェクト全体で一貫したコーディング標準や設定を維持するための永続的な指示(ルール)を定義する .a4drules フォルダ配下に配置し、有効化しておけば自動適用される
ワークフロー デプロイやテスト、リリース作成などの定型的なタスクについて、作業フローを定義し、エージェントにその手順通り実行させる .a4drules/workflows フォルダ配下に配置し、/[workflow-name] で呼び出せる
チェックポイント 会話のリクエストごとにスナップショットを作成し、ファイルの差分確認やロールバックを行う リクエストごとに表示される「Compare」「Restore」ボタンをクリックする
コンテキスト LLM にコンテキスト情報を提供する @でファイルを指定する、またはファイル内の選択箇所の右クリックメニューを選択する
MCP LLM に外部ツールへの連携を可能にする 設定ファイルに MCP を追加し、有効化しておけば、必要に応じて使用される

Deep Planning は類似のAIツールではあまり見ない機能ですが、それ以外の機能については、類似のAIツールでも同様の機能が提供されていることが多いです。

LLM の種類と利用上限

続いて Agentforce Vibes の LLM の種類と利用上限について確認しておきたいと思います。

Agentforce Vibes は、Pro モデルCore モデル(SFR Model) の2種類を自動的に使い分ける仕様となっています。

モデル 説明
Pro モデル サードパーティ製の主要なモデル
Core モデル(SFR Model) Salesforce が独自に開発し、コード関連のタスク処理に特化してファインチューニングされているモデル

Pro モデルには Salesforce 組織単位で組織ごとの利用上限があり、1日あたり「50リクエスト」または「1Mトーク」のいずれかに達すると、自動的に Core モデルに切り替わる仕組みとなっています。

ここまでは Agentforce Vibes の公式ドキュメントから分かる情報を整理し、お伝えしてきました。 ここからは実際に Agentforce Vibes を使ってみた中で分かった知見をまとめていきたいと思います。

実際に使って分かったシステム内部の挙動

Agentforce Vibes では会話履歴をエクスポートできるのですが、その中身を確認すると、LLM に送信されるシステムプロンプトが観察できます。 これらを見てみると、裏側ではどのような指示が与えられているかが見えてきました。

システムプロンプトは以下の3種類に分けられます。

  1. 全てのリクエストで共通の内容
  2. エージェントモードによって固有の内容
  3. Deep Planning 実行時の内容

それぞれ順に見ていきましょう。

①全てのリクエストで共通の内容

全てのリクエストで共通の内容を整理したのが以下の表です。

要素 説明
Cursor Visible Files Cursor が参照可能なファイル一覧
Cursor Open Tabs Cursor で開いているタブ一覧
Current Time 現在日時(タイムゾーン付き)
Current Working Directory Files ワークスペースのファイル構造(プロジェクトフォルダの全てのファイルが含まれている)
Workspace Configuration ワークスペース設定 JSON
Detected CLI Tools 利用可能な CLI ツール一覧
Context Window Usage トークン使用量
Current Mode 現在のモード名

「Cursor Visible Files」「Cursor Open Tabs」のように「Cursor」と記載されているのは、システムプロンプトの <environment_details> ブロックの中にある記述で、使用しているエディタの環境情報がメタデータとして渡されているためです。Agentforce Vibes はエディタの拡張機能として提供されているため、エディタ名がそのまま使われているのだと思います。

現在開いているタブ一覧やワークスペースのプロジェクト構造全体の情報など、修正対象ファイルの特定や現状のメタデータ構造の把握に役立つ情報が提供されていることが分かります。

つまり、エージェントはプロジェクト内のファイル構成を把握しているため、既存のメタデータを考慮したコード生成が期待できるわけです。

その一方で、ファイル数が多いプロジェクトでは、このファイル構造情報だけでコンテキストを消費してしまう可能性があるため、コンテキストの肥大化には注意が必要です。

②エージェントモードによって固有の内容

続いて、エージェントモードによって固有の内容としては、以下のようなものがありました。

要素 Plan モード Act モード
Todoリスト オプション(任意)として位置づけ 推奨(Recommended)として位置づけ
目的 情報収集・質問・ソリューション設計に集中 タスク実行に集中
使用ツール plan_mode_respond tool 各種実行系ツール
モード切替 Act モードへの切り替えはユーザー手動で行う指示が含まれる 切り替え指示なし

Todoリストの位置付けがモードによって異なることが読み取れます。 Plan モードでは作成は任意となっていて、 LLM に任せる記述となっていますが、Act モードでは作成を推奨となっており、Todoリストに沿ってタスク実行を進めていく形式を強めに要求しています。

また、Plan モードでは、Act モードへの手動切り替えを促す指示が含まれています。 これは、Plan モードで作成した計画を実行するには Act モードに切り替える必要がありますが、それをエージェント側で実行することができないためです。

このように、UI上ではエージェントモードを切り替えるだけで済んでいますが、実際には裏側でシステムプロンプトを動的に切り替え、モードに適した振る舞いを要求していることが分かります。

③Deep Planning実行時の内容

さらに、Deep Planning 実行時のみ差し込まれる内容としては、以下のようになっていました。

  1. Silent Investigation(調査)findgrep コマンドでコードベースを網羅的に探索する
  2. Discussion and Questions(質問):要件の曖昧な点を確認する
  3. Create Implementation Plan Document(計画作成):Overview / Types / Files / Functions / Classes / Dependencies / Testing / Implementation Order のセクションで構造化されたimplementation_plan.md を作成する
  4. Create Implementation Task(タスク生成):順序付けられたタスクリストを作成し、Act モードへの切り替えを指示する

調査→質問→計画作成→タスク生成の4ステップを順序通りに実行するよう厳格に指示されていることが分かります。

実際に使って分かった強み

ここからは、実際に使ってみた中で分かった Agentforce Vibes の強みを書いていきたいと思います。

Salesforce開発が前提となっており、スピーディに開発に着手できる

Salesforce開発が前提となっているため、固有の用語(Apex、LWC、sObject等)について詳しく説明せずに開発を進めることができ、前提知識の注入を省けます。

Apex/LWC 開発用ルールが事前に用意されている

Apex/LWC 開発用のカスタムルールが最初から用意されており、手動で作成しなくて済みます。 もちろん自前でカスタムルールを作成して使用することも可能です。

Einstein Trust Layer によるガードレールを遵守できる

接続先の Salesforce 組織で Einstein Trust Layer 設定を有効にしていれば、常に Einstein Trust Layer に準拠した回答が得られ、ガードレールとして機能します。

Salesforce DX MCP Server がセットアップ不要で使える

デフォルトで Salesforce DX MCP Server が設定済みとなっており、手動設定せずに使い始めることができます。

会話履歴の視認性が高い

セッション内の会話履歴が見やすく、Timeline 形式の横並びで色ごとにタスクの属性が分類されています。Timeline のセルにマウスオーバーすると、そのタスクの概要と実時刻が確認でき、クリックすると該当の会話内容に移動できるなど、会話履歴を見返しやすくなっています。

チェックポイント機能が充実している

実行したタスクとファイルのどちらか一方、またはその両方を選択して復元が可能となっています。 類似のAIツールだと実行したタスクとファイルの両方セットしか復元できない場合が多いです。

実際に使って分かった課題

強みがある一方で、実際に使用する中でいくつか課題も見つかりました。

Pro モデルの利用上限が厳しい

先述の通り、Pro モデルは1日あたり「50リクエスト」または「1Mトーク」で上限に達してしまいます。 あくまで一例ではありますが、実際に開発を進めた場合では、わずか30分程度で Pro モデルの制限に達してしまいました。 これはファイルの読み書き、MCP ツールの使用、会話要約、ユーザーへのレスポンスなど、全てのアクションがそれぞれ1リクエストとしてカウントされるためです。

コンテキスト上限が厳しい

Einstein Trust Layer を有効にしている場合、最大コンテキスト長は 65,536 トークンに制限されます。これはチャットでのやり取りの制約としてはかなり厳しく、数件のラリーですぐに上限に達してしまいます。

対策として、「Salesforce › Einstein For Developers: Optimize Context Window For Data Masking」設定を有効にする方法があります。この設定を有効にすると、コンテキストを圧縮して LLM に送信するため、65,536 トークン制限内に収まるようになります。ただし、圧縮によって情報が削られるため、回答精度が低下する可能性がある点は認識しておく必要があります。

コンテキストに画像を渡せない

画像ファイルをコンテキストとして渡すことができません。

バックグラウンド実行や複数タブに非対応

チャットのバックグラウンド実行に対応しておらず、チャット画面から離れるとエージェント実行が中断されてしまいます。 また、チャット画面の複数タブを開けないため、複数タスクの並行実行や、別タブで過去の会話履歴を参照することができません。

コマンドがローカル環境で直接実行される

コマンドがエージェント専用のコンテナではなく、ローカル環境で直接実行されます。 例えば Cursor の場合だと、不正なファイルアクセスやネットワーク通信を遮断する制限付きのサンドボックス環境で実行が可能となっています。

Deep Planning が不安定

実際に使ってみると、最初のコード静的解析でコマンドが構文エラーとなり、その後も会話要約が何度も実行されるなど、動作が不安定な印象でした。

ただし、あくまで実行結果の一例ですので、挙動の一つの傾向としてご理解ください。

実装精度・デバッグ精度が今ひとつ

今回の検証では「カンバン風のシンプルなタスク管理ボードの作成」というタスクを実行してみました。

結果として、以下のように Apex/LWC やデバッグ、依存関係の解決でミスがあり、正しく実装できないケースが見受けられました。(SFR Model を使用)

こちらについても、あくまで実装結果の一例であることをご理解ください。

観点 Agentforce Vibes
Apex @AuraEnabled アノテーションの欠落などのミスあり
LWC プロパティ名の不一致、@wire 引数の不正など実装ミスあり
デバッグ LWC の修正方針は正しかったが、ファイル修正ツールの失敗が多発し正しく修正できず
依存関係の解決 カスタム項目の先行デプロイが必要だが解消できず

会話要約が頻繁に挟まれる

会話を続けていると、AI による会話要約が頻繁に挟まれ、処理時間が長くなる傾向にありました。 要約結果が出力されるため、要約結果を確認できる点は良いのですが、チャット履歴が冗長になる点はマイナスと言えます。

まず試すなら

ここまで強みと課題を見てきましたが、「まず試してみたい」という場合は、小規模の実装デプロイ・テスト実行など MCP 活用が効く作業から始めるのがおすすめです。

特に Salesforce DX MCP Server が組み込まれている点は Agentforce Vibes の強みなので、MCP を活用した作業で試すと効果を実感しやすいと思います。

ちなみに、実際の開発作業では、以下のような MCP ツールが使用されていました。

ツール名 用途
guide_lwc_development LWC 開発ガイドラインを取得
guide_lwc_accessibility LWC のアクセシビリティガイドラインを取得
get_username デフォルトターゲット組織のユーザー名/エイリアスを取得
deploy_metadata Salesforce組織へのメタデータをデプロイ
run_apex_test Apex テストクラスを実行しカバレッジを取得

「既存の Apex クラスにテストクラスを追加してテスト実行」や「LWC の軽微な修正とデプロイ」といった作業であれば、最低限の初期設定で素早く開始しつつ、MCP の恩恵を受けることができます。

まとめ

今回は、Salesforce 開発に特化した AI 支援ツール「Agentforce Vibes」について調査し、実際に使ってみて分かった知見をまとめました。

現時点では、Cursor など類似のAIツールで十分なケースが多いと思いますが、Einstein Trust Layer が必須要件となる場合や、Salesforce 開発の初期設定を手軽に済ませたい場合には、Agentforce Vibes が選択肢になると思います。

以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。