Intelligent Context via Agentforce Data Library のクレジット消費を理解する

こんにちは。エンジニアの山下です。

Salesforce Winter '26 のアップデートにて、Agentforce Data Library に対して 10 MB 以下のファイルをアップロードした場合に Intelligent Context が自動的に適用されるようになりました。これによりアップロードしたファイルに最適化されたベクトル検索のインデックスを構築することが可能になります。

元々 Agentforce Data Library は Salesforce の中で RAG に使用するファイルを管理したい場合にまず選択肢として挙がる機能なので、この恩恵を受ける機会は多そうという期待感があります。

一方でいくつか気になる点もあります。

まず第一に Intelligent Context の自動適用は強制です。従って、もはや従来の方式で Agentforce Data Library を利用することはできません。その意味では本機能のリリースはある種の破壊的更新と言えます。

また、強制適用に伴って効いてくるのがコスト面です。Intelligent Context のクレジット消費量は従来のインデックス構築で消費されるものよりも遥かに大きいため、これが利用者を悩ませる一因となります。

となると、実際どのくらいコストが変わるのか試算したくなるところですが、輪をかけて面倒なことに Intelligent Context の公式ドキュメントは記述が曖昧で、正確な動作やクレジット消費量についてドキュメントから理解するのは困難です。

そんなこんなが相まって色々と混沌としているので、今回は Intelligent Context を Agentforce Data Library 経由で利用した場合のクレジット消費の仕組みについて、サポートに問い合わせてわかった事柄をまとめたいと思います。

なお、今回は Intelligent Context のクレジット消費の仕組みに焦点を当てて説明するため、機能面については特に述べません。機能面が気になる方は以下の記事で解説しているので、そちらを参照願います。

cloud.flect.co.jp

クレジット計算の基礎

前提として Agentforce Data Library で消費されるクレジットは Data 360 のものであり、Agentforce のクレジットではありません。機能名によってこの点が少し紛らわしいので、混同しないように注意が必要です。

料金体系は基本的にファイルのサイズに依存する従量課金制になっています。つまり、Agentforce Data Library にアップロードしたファイルの合計サイズに応じてクレジット消費量が決まる仕組みです。

具体的には以下の計算式で消費されるクレジットが決まります。

処理対象のファイルサイズ(MB) x サービスの消費係数 = クレジット消費量

注目すべきは「サービスの消費係数」という要素で、これは利用したサービス(つまり従来の方式か Intelligent Context か)ごとに定められたクレジット消費の係数です。記事の冒頭で Intelligent Context のクレジット消費量は従来のものより大きいと述べましたが、これはこの係数の大きさの違いによるものです。

では具体的な係数はいくらかというと、これは Rate Card で確認できます。従来の処理では Unstructured Data Processed という項目が適用され、Intelligent Context では Intelligent Processing という項目が適用されます。これらをまとめたのが以下の表です。

対象 分類 係数
従来 Unstructured Data Processed 60
Intelligent Context Intelligent Processing 750

従来では 60 だった係数が Intelligent Context では 750 と 10 倍以上になっています。言うまでもなく、これはかなり大きな変化です。

参考までに、筆者の経験に照らすと該当のクレジットの保有量は 250,000 程度が一般的となっています。これを参考値として計算すると、従来では合計 4 GB のアップロードに耐えられたものが Intelligent Context では 330 MB ほどアップロードするだけで枯渇する計算になります。これまではそうそうクレジット枯渇などしないという感覚だったのですが、これからはクレジット枯渇が現実的な心配事として持ち上がってきそうではあります。

また、Salesforce は 100,000 クレジットを 500 ドルで販売しているため、実際のコストを金額ベースで計算することもできます。Intelligent Context 適用下では MB あたり 750 クレジットが消費されるので、

  • 500 / 100,000 * 750 = 3.75

となり、処理対象となるファイルのサイズに応じて MB あたり 3.75 ドルのコストがかかる計算になります。日本円にすると約 587 円です。同様に従来の価格を計算すると MB あたり約 47 円であることを考えると、やはり結構なコスト増という印象です。

なお、ここまでの内容は普通にドキュメントに記載されている事柄なので、きちんと精査すればサポートへの問い合わせがなくとも到達可能です。

Intelligent Context の適用範囲

クレジット消費の係数が 10 倍以上に跳ね上がるのは分かりましたが、そこで気になるのは「じゃあ実際のクレジット消費も 10 倍以上になるのか」という点です。というのも、Intelligent Context によるクレジット消費の対象となるファイルの範囲によってはそれほど大きなコスト増に繋がらない可能性もあるためです。

実際、公式ドキュメント には以下のような記述があります。

When you create a file-based data library with a PDF that's 10 MB or less, we automatically apply advanced processing tools. Advanced processing uses Intelligent Context to create the best search index and retrieval pipeline for your data. The first 5 files are evaluated to determine optimal indexing configuration using Intelligent Context, so we recommend that they best represent the information you want to include in your data library.

要約すると、Agentforce Data Library にアップロードしたファイルのうち、最初の 5 ファイルが Intelligent Context によって最適なインデックスの設定を決定するために評価される、と書いてあります。

この記述が Intelligent Context のクレジット消費の考え方をややこしくしている一因で、最初の 5 ファイルが評価されるということはクレジット消費もこの 5 ファイルのみに限定されるのか、あるいは 5 ファイルの評価とは別にクレジット消費は全ファイルに適用されるのかについて、解釈が分かれるところです。

同様に Data 360 Limits and Guidelines にも、Intelligent Context にはファイルのアップロードは 5 ファイルまでしか行えないという緩和不可能な制約があると明記されていますが、クレジット消費には特に言及されていません。

筆者の知る限り、上記以上の情報は既存のドキュメントにはなく、これ以上は実動作を確認するかサポートに問い合わせる以外の確認方法はないというのが現状です。

また、少し外れた内容にはなるのですが、そもそも Intelligent Context という言葉自体が Salesforce のドキュメント上で多義的に用いられている節があり、これが機能のスコープを曖昧にしているという問題もあります。具体的には、

  • Intelligent Context はインデックス生成の最適な設定を判定する機能を指す
  • Intelligent Context は最適な設定でインデックスを生成する機能を指す

のどちらなのかがあまりはっきりしません。

ここがはっきりしていれば、前者なら判定までが仕事なので 5 ファイルのみへのクレジット消費の適用、後者なら生成までが仕事なので全ファイルへのクレジット消費の適用であろうといった推論をするための足がかりになります。

精査の結果、ドキュメントの記述だけではこれらの内容を明確にすることができないと判断せざるを得なかったため、結局これらについてはまとめてサポートに問い合わせました。

Intelligent Context の定義

まずは言葉の定義から確認した結果、Intelligent Context はインデックス生成の最適な設定を判定する機能であるというのが回答でした。

従って、Intelligent Context の仕事の範囲は設定の判定までであり、インデックスの生成はその範疇ではないということになります。

Intelligent Context のクレジット消費

Intelligent Context の定義が「最適な設定の判定」であるならば、その仕事は最初の 5 ファイルを評価した時点で完了しているはずです。従って、クレジット消費も当然 5 ファイルに限定されると考えていましたが、実際には以下のようなクレジット消費がなされる仕様になっています。

  1. 最初の 5 ファイルには Unstructured Data Processed が適用される
    • つまり MB あたり 60 のクレジット消費が適用される
  2. それとは別に全ファイル分の Intelligent Processing が適用される
    • つまり MB あたり 750 のクレジット消費が適用される

つまり、Intelligent Context によるクレジット消費は全ファイルに対して適用され、かつ、それに加えて最初の 5 ファイルの評価には従来の処理と同額のクレジット消費が課されます。

Intelligent Context が持つ責務と実際のクレジット消費があまりリンクしていないように見えるので解釈が難しいのですが、Intelligent Context では「最適な設定の判定」という仕事それ自体に対してではなく、判定された結果を用いた処理に対してクレジット消費が課されることになっているためにこのような仕組みになる、というのが筆者が辿り着いた結論です。

実際、ドキュメント によると Intelligent Processing の定義は以下のようになっています。

Usage is calculated based on the amount of unstructured data that is processed using AI-assisted features such as LLM-based parsing, LLM-based visual data preprocessing, image processing, and Intelligent Context.

要約すると、Intelligent Context などの機能を使って処理された非構造化データによって計算されると書かれています。この「機能を使って」というのがどのレベルの話を指すのかという議論はありそうですが、実際の仕様と照らし合わせて考えた結果、Intelligent Context で判定された最適な設定を利用して、というほどの意味だと理解しました。

Intelligent Context では設定の判定に LLM を使用しますが、後続のインデックス生成の処理にも画像処理等のために LLM が使用されると思われます。LLM を使用する際は電力コスト等がかかるので基本的にプラットフォーム側はそのコストを精算せねばならず、その分を Intelligent Processing として計上しているという流れだと思われます。

そう考えると先ほどのクレジット消費の仕様は、

  1. Intelligent Context のための 5 ファイルの評価が行われる
    • → 非構造化データの解析自体はしているので精算が必要
    • → しかし Intelligent Context の結果を利用したものではない
    • → Unstructured Data Processed としてクレジット消費される
  2. Intelligent Context の結果を用いてインデックスが生成される
    • → Intelligent Processing としてクレジット消費される

という形で解釈できそうです。

Intelligent Context によるクレジット消費と考えると直感よりも多めに課金されている印象になってしまいますが、インデックス生成において利用される LLM の処理に対する課金であると考えると、一応筋は通る形になっているかと思います。

というわけで、本章の冒頭で述べた「実際のクレジット消費も 10 倍以上になるのか」という点に立ち戻ると、その答えは Yes です。全てのファイルに対して 10 倍以上に跳ね上がったクレジット消費が適用されます。つらい。

Agentforce Data Library への影響

そうなってくると Agentforce Data Library 自体の立ち位置がかなり変わってきそうです。

Salesforce Winter '26 適用前の Agentforce Data Library は PDF 等の資料をとりあえず投げ込んでおくといった用途に適しており、使い勝手のよさが光る機能だったのですが、今回の更新で主用途の想定が変わったような印象があります。具体的には、使い勝手よりも機能としてのリッチさを全面に押し出す方向に進んだように感じられます。

そもそも今回適用されるようになった Intelligent Context は画像という比較的検索で取り扱いが難しいコンテンツを対象にした機能であり、こういった難しい問題を自動で解消する代わりに費用はそれなりにいただきます、という Salesforce の方向性が伺えます。

従って、これまで Salesforce の中で RAG に使用するファイルを管理したい場合に、利便性とコストのバランスを考慮して Agentforce Data Library が選択肢に上がっていましたが、今後はその線での検討は難しくなりそうです。代わりにファイル中に含まれる画像の処理などのリッチな機能が求められる場合には候補に入ってくるかもしれません。

逆に今後、リッチな機能が不要で価格とのバランスを取りたい場合は、ファイルは外部ストレージサービスに置いて UDMO として Data 360 に取り込むというようなアプローチが必要になっていきそうです。

個人的には、従来の Agentforce Data Library の使い勝手のよさを新機能で無にしてしまうのは惜しいので、Intelligent Context の適用を選択式にしてもらえると嬉しいと思いました。あとここまでインパクトの大きい変更を事前の準備期間なく適用するのはおやめください。

まとめ

というわけで、今回は Intelligent Context を Agentforce Data Library 経由で利用した場合のクレジット消費の仕組みについてまとめました。結論を再掲すると以下になります。

  • Intelligent Context のクレジット消費は全ファイルに適用される
  • Intelligent Context でスキャンされる 5 ファイルはクレジット消費される
  • Agentforce Data Library は多機能高級方面に舵を切った

Agentforce Data Library の今後の運用判断に関わる重要な変更のため、この内容は把握しておかないと痛い目を見そうです。この記事が開発者の皆様のお役に立てば幸いです。

以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。